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元町映画館☆特集

ただダンスが好きだった。ずっと踊り続けて、彼はメンフィスの光になった 『リル・バック ストリートから世界へ』

運命は自分で引き寄せる

観終わったあと、こう思った。「なんてカッコいいんだ」。こんな感情になったのは久しぶりだった。皆さんにとって、ダンスといえば誰を思い浮かべますか。マイケル・ジャクソンやアイドル、最近だとK-POPなどでダンスにハマる人も多いのではないでしょうかはダンス全くの未経験の私。今までは生でダンスを見ても「おぉ~」と感心するくらいでした。でもこの映画の彼を観てから、つくづく学生時代にダンスをやっていたらどうなっていたのだろうと考えるようになりました。すごい、凄すぎる!!。人間はここまで自分を表現できるのか。

今回ご紹介するのはドキュメンタリー映画『リル・バック ストリートから世界へ』。このカッコ良いビジュアルを見て、「ブレイクダンスかな?」と思った自分をぶん殴ってやりたい。本作の主人公は世界的ダンサー、チャールズ・ライリー(愛称リル・バック)。彼がいかにして世界的ダンサーになったか、その軌跡を追った本作。リル・バックが生まれたのは全米有数の犯罪多発地域、メンフィス。キング牧師が暗殺された場所としてもしられる場所で彼が選択したのは踊ることでした。身体一つで表現し、”ジューキン”と呼ばれる踊りを楽しむリル・バック。「俺たちは人殺しになるより、ダンスがしたい」

もう一度言います、ダンス未経験な私。それでも映画を観た後、興奮していました。「とんでもなくカッコいいんだ」と。ダンスシーンをとにかく観て欲しい、それに尽きるんですが、本作の魅力はなんと言ってもリル・バックのダンスへの姿勢だと思うんです。一歩間違えれば、犯罪者になってしまう可能性もあった場所メンフィスで育った彼。

運命は自分で引き寄せる
彼の家族も別段、裕福ではないらしい。ダンスにハマるリル・バックを姉や家族が支えていました。そして彼は「ダンスが上手くなりたい」、その一心で奨学金を得てクラシックバレエに挑戦するのです。メンフィスで学んだジェーキンとバレエを融合させ、披露する。この映像が鳥肌。結局このダンスが世界的チェロ奏者ヨーヨー・マの目に留まり、彼の名前は世界中に広がることに。一見サクセスストーリーに見えるこの映画。
成功にはタイミングもあったと思うんです。好きなことに挑戦すること、そしてそれを披露する。ヨーヨー・マとの競演をたまたま撮影、そして動画をネット上にアップしていたのが映画監督のスパイク・ジョーンズというのも驚き、偶然なのかもしれません。でもリル・バックの経験、行動があらゆる人を引きつける。運命は自分で獲得するものだと痛感させられました。遊びも仕事もそうだと思うんです。好きなことを続けるためには誰よりも努力をしなければならない。人や分野によっては「センス」があるからで片づけられるかもしれません。リル・バックももしかすると当時はそんな風に周りから思われていたのかも。実際、彼は身体的な柔らかさを持っている。それはダンス向きなのかもしれません。でも表現はどうか。ヨーヨー・マとの映像はさすが彼を有名にしただけはある。圧倒的。おそらくスマホで撮影されたその映像の情報量。淡々と自分たちを表現するその瞬間瞬間がたまらなくカッコ良い。とってもとっても贅沢な時間。舞台が整えられているわけではない、ステージもない、でもダンス、ジューキン、身体一つでこんなにも人を惹きつけるのは、彼の今までの稽古、時間があったからこそ。その努力、彼の人間性が前面に現れていた時間でした。本当に本当にカッコ良かった。
そしてリル・バックの快進撃が始まります。その後の活躍はぜひ映画を観て、その凄さを確認して欲しいのですが、彼の魅力は他にも。

子どもたちへのダンス指導
人をこんなに感動させる彼はいわばメンフィスの希望。世界で活躍しながら、ダンス教室などでメンフィスの子どもたちにダンスを指導するシーンがあります。これが何とも微笑ましい。彼は子どもたちに言います。「俺はずっと踊るときのダンスを聴いている。何時間も分析するんだ、その曲を。そして再構築していく」。世界で活躍するスターからこの言葉を掛けられた子どもたちは何を思うんでしょうか。第二のリル・バックがここから生まれるかも。

そして物語はすすみ、彼のこれからの展望なども語られます。そして彼はこう言います。「ジェーキンには人生が込められている」。ただカッコ良いだけじゃない、好きを突きつめる、ダンスへの姿勢に感服いたしました。ぜひカッコいいリル・バックの姿をスクリーンでお楽しみください。