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元町映画館☆特集

『生きろ 島田叡ー戦中最後の沖縄県知事』

必要とされる人材はどういう生き方、考え方をしているのか。考え、噛み締めながらご覧いただきたい作品

(c)2021 映画『生きろ 島田叡』製作委員会
(c)2021 映画『生きろ 島田叡』製作委員会
兵庫県須磨区出身、島田叡。この人物の名前を映画で初めて知りました。皆様はご存知でしたか。

「知らなかったー」。

今、必要とされる人材はどういう生き方、考え方をしているのか。考え、噛み締めながらご覧いただきたい作品です。

アジア太平洋戦争末期。「日本が戦争に負けた」。そうなることが分かる以前、1945年1月31日に沖縄の地を踏んだ戦中最後の沖縄県知事・島田叡(しまだ・あきら)。舞台は米軍の攻撃を受けた沖縄・那覇地区。大阪からやってきた島田は知事就任と同時に大規模な疎開促進、自ら台湾まで出向きコメの確保を行う。「玉砕こそ美徳」とい考えに抗い、民衆の命を第一優先に活動した。そんな活動においても戦争により住民は戦闘に巻き込まれて日々命を落としていく。島田の「生きろ」というメッセージは住民に届くのか。

事実が何層にもわたり島田叡という人物が語られていく。その一方で改めて、戦争が誰のためのものだったのか?という疑問もわく。

激戦地と呼ばれる沖縄。その戦火を生き延びた住民たちの貴重な証言。遺族らへの取材を通じて、これまで語られることのなかった島田叡の生涯が浮かび上がってきます。

本作を観てやっとそういう人物に焦点を当てた映画が出てきたと思いました。今までも沖縄を舞台にした映画はいくつかありました。その時に何が…と「できごと」に注目されがちな映画が多かったように思います。本作は第二次大戦、沖縄、そして体勢に抗った「島田叡」という人物が深堀りされています。やっぱり人の話は面白い。

戦争という大きなできごとの中で個人がどのように育ち、県知事になって、どんな言葉をなげかけたのか。島田叡を語る沖縄の人はそろって「生きろ、死ぬんじゃないぞ」と言われたそうです。中には涙を流しながらインタビューに答える人も。「生き証人」の言葉には説得力があり、76年前に何があったのか。どんな教科書の言葉よりも強く響きます。こういう映画によって歴史を紡いでいく。戦争を生きた人がだんだんと減っていく中、映像、映画として残していく必要があると改めて感じました。

特に中盤、島田による「沖縄県庁解散する」と宣言するシーンは食い入るように観てしまった。塹壕の中で臨時的に設営された行政本部。市民の避難場所としても機能し、島田の姿もそこにあった。しかし戦火が広がり、米軍に囲まれてしまう。「捕虜になるなら自決しろ」。その風潮が広がるなか、島田は「友軍とともに行動するな。米軍は女、子供には危害は加えない」と伝えた。証言者によると島田のことばの真意に気づいたのは戦後だったそうだ。「玉砕主義」が浸透しているのは驚きとともに、「生きろ」、その言葉がどれだけ多くの住民の命を救ったのだろうか。

言葉の力、島田叡という人物が持つ力をぜひ映画館でお確かめください。
生きろ 島田叡ー戦中最後の沖縄県知事
(監督:佐古忠彦/2021年/日本/118分/カラー)

上映スケジュール
3/27(土)~4/2(金) 10:00~
4/3(土)~4/9(金) 12:50~
4/10(土)~4/16(金) 10:30~
4/17(土)~4/23(金) 17:10~