地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、神戸市中央区の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

神戸市中央区の地域情報サイト「まいぷれ」

元町映画館☆特集

それでも人はなお夢を抱く『淪落の人』公開

どん底の中でも夢を持ち続ける大切さを教えてくれます。人生まだまだ捨てたもんじゃない!

障害を抱えている人とそれを支える人を描く…
正直私こういう映画は避けてきました。特に理由はないけれど、でも観たところで私にはどうすることもできない。でも「観て良かった」…と久しぶりに思えた作品です。
本作はフィクション。障害を抱えて生きていく人やその街に仕方なく暮らしている人らの葛藤。何より、どん底の中でも夢を持ち続ける大切さを教えてくれます。人生まだまだ捨てたもんじゃない!!

こんなお話。
事故によって下半身不随、誰かの介護が無ければ生きていけない車椅子の男性チョンウィン。彼の唯一の楽しみは元同僚との会話と海外で勉強に励む息子の成長をネットで見るだけ。家族との意思疎通はうまくいっていない。頑固な性格は、その生活は住み込み家政婦を何人も辞めさせていた。そしてやってきたフィリピン人女性の家政婦エヴリン。広東語が話せない彼女に苛立ちを募らせるチョンウィン。しかし片言の英語で会話をし、関係を作っていくと、彼女にとある夢があったことを知る…。懇意にしてくれるエヴリンの夢を叶えるために手助けするチョンウィンだったが…。

フィクションです。映画です。
でも感動してしまうのは出演者の力量か、それとも現実を前に夢を見ててぬフリをしてきた落ち度なのか。それともかつて抱いていた夢を映画を観ながら思い出したかわかりませんが少なくとも私は泣きました。

「人生のどん底」チョンウィンは現実を受け止めて、仕方ないと諦めている。一方で将来明るい医者を目指す息子の成長/成功を楽しみにしている。エヴリンはフィリピンから出稼ぎのため、家政婦として活躍する。しかし母国の旦那や家族との関係がうまくいかず、写真家になる夢を諦めた。両者ともに何かを諦めて今の人生を受け止めて生活している。偶然二人が出会い、互いの立場を通して、夢や希望を再発見する。その行程がとても丁寧だ。

不器用なチョンウィン。悪人になりきれない容姿が目頭を熱くする。オラついてもどこかはみ出てくる人の良さ。エヴリンも慣れない広東語に苦しみ、時に市場の店員に騙されても必死で街やチョンウィンに食らいついていく。そしてたまに家政婦仲間に愚痴を漏らす。その人間臭さが愛おしい。どちらも人生に諦めてはいるが必死さは伝わってくる。

そして本作の忘れてはならないテーマ「夢」。
チョンウィンはエヴリンの誕生日に一眼レフカメラをプレゼントする。しかもサプライズで。
私はこの時に「あぁこのまま二人の人生がうまくいくんだな」と思った。でもそれは違った。幸運が続くことはない。甘さのあとにすれ違いという超えられない壁が立ちはだかる。それでも二人は前を向いて、ぶつかっていく。そしてラスト、絵本の1ページ1ページをゆっくりめくるようなドキドキ、「どうかこのまま上手くいってほしい」という期待感でいっぱいになる。

人間社会の生きづらさや、どことなく感じる窮屈さ。そして香港とフィリピンという国境を超えた人間の交流。「向き合う」ことの大切さ、誰かを信じることの大切さを教えてくれた本作。世界中がこんな二人のようになれたらと思わずにいられない。夢を諦めそうな友人/知人がいればぜひ本作を教えてあげてください。そして一緒に映画館へ連れて行ってください。『淪落の人』必見です。
淪落の人
監督:オリヴァー・チャン
製作:フルーツ・チャン
出演:アンソニー・ウォン、クリセル・コンサンジ、サム・リー、セシリア・イップ
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
2018年/香港/原題:淪落人/英題:STILL HUMAN 112分/ビスタ/5.1ch/G
NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED (c)2018 字幕:鈴木真理子

上映スケジュール
7/4(土)-7/10(金)13:00~
7/11(土)-7/17(金)10:30~