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元町映画館☆特集

ここがあってよかった。そんな未来を探している。『ワンダーウォール 劇場版』

誰にだって大切な人や場所がある。それを守りたい側と、理由は違えどそれを新しくするもの。目に見えているものだけが全てじゃない

誰にだって大切な人や場所がある。それを守りたい側と、理由は違えどそれを新しくするもの。目に見えているものだけが全てじゃない。そんな映画。

舞台は京都にある学生寮「近衛寮」。
そこで暮らす学生たちは互いにほぼプライベートのない生活でも楽しく各々の時間を過ごしていた。そんなある日、老朽化による建て替え議論が巻き起こる。いきなり居場所がなくなる可能性が生まれた学生たちと、新しくしたい大学側。今までなかった壁が立ち、大学側の刺客として美人なスタッフも配置された。果たしてこの議論の行き着く先は…。

学生と大学が対立するという、学校青春モノに見えて、恋愛とか出会いとか別れとかあると思うでしょう…そんな展開、本作にはありません。だから恋愛モノに少々退屈さを感じる私も楽しめる。

何が良いって、学生も大学も頑固というか不器用。引くに引けない状況になっている。学生は自分たちの居心地がいい場所をいきなり奪われる。私はもらったことがないが、いきなり「出て行きなさい」と言われたら頭が混乱する、ゾッとする。大学側の言い分もわかる。老朽化による建て替え。どこかで聞いたことのある理由だが、「近衛寮」は映像で見る限り、物が散乱し、いつ潰れてもおかしくない印象を受ける。これは住んでいる学生にとっても悪影響なんじゃ…と思わずにいられない。それがまして、学校の管轄なのだから、イメージが悪くなるのは必死だ。

その両者の対立を均等かつ、ハラハラ描く絶妙な脚本を書いているのは渡辺あやさん。過去作にNHK連続ドラマ小説『カーネーション』、映画『ジョゼと虎と魚たち』などこれまた名作が多い。

渡辺さんの脚本の上で、建物の歴史と、関係者の感情まで話はすすんでいく。住んでみないと分からない心地よさと自由さ、歴史、補修しながら建物を「残したい」学生と大学の意見は互いに硬化しつつ平行線へ。

私が特に注目してもらいたいシーンがある。
それは学生たちが退去通知を受け取った後に、学生課を訪れると壁が出現、困惑するシーンだ。はじめにはなかったものが、学生らの講義を受けて突如作られた。プラスチックの壁を通して本音をぶつけても生の声は大学側に届かない。大学側の意見もテンプレだ。これは現代にも共通することではないか。気に入らない事物があれば、拒絶、または排除する。一つのほころびか一気に崩れ去ってしまう、その可能性といつも共存しなければならない今と。

映画の中では生きる上で大切な住む場所を奪われるから、権力と戦う構造になっているが、これは誰にでも遭遇する可能性がある。どちらが善悪か分からない、しっかり対話することで問題を解決しようというメッセージが込められているように感じた。問題解決のためには順序や時に原点に戻る大切さを感じた。

目に見えているものだけが正解じゃない。自分にとって、その場所にとって、何が大切、重要なことか今一度立ち返る気持ちにさせてくれる本作。ぜひお時間あればご覧ください。
ワンダーウォール 劇場版
出演:須藤 蓮 岡山 天音 三村 和敬 中崎 敏 若葉 竜也 山村 紅葉 二口 大学/成海 璃子
監督:前田 悠希
脚本:渡辺 あや
音楽:岩崎 太整
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
製作年:2018
製作国:日本
上映時間:68
公式サイト:
 
上映スケジュール
6/20()6/26()18:30
6/27()7/3()12:10
(c)2018 NHK