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元町映画館☆特集

ちょっとの勇気があれば人生は豊かになる 『マイ・ブックショップ』

書店がなかった町に夫のとの夢を叶えるためにやってきた彼女の夢は「書店を作る」こと。

私はこの映画を観て、なんだか元町映画館と同じような匂いを感じ取ったのです…。

こんなお話
舞台は1950年代後半のイギリス。海辺の小さな町におり立ったのは戦争で夫を亡くしたフローレンス。彼女は書店がなかった町に夫のとの夢を叶えるためにやってきたのだ。彼女の夢は「書店を作る」こと。その町は保守的な町で文化的な要素があまり見られない。彼女はそんな町で有力者の嫌がらせを受けながらも何とかオープンさせる。「華氏451度」など先進的な本の並びに住人からの支持もあり、瞬く間に繁盛店へ。しかし、有力者のガマート夫人の画策によって、彼女は窮地に立たされる。そんなある日、頼りにしていた老紳士と逢うことになり…。

「町に本屋を作る」。それは非常に文化的、かなり挑戦的なことだと思う。ネットが当たり前の時代。特に現代でそれを進んで行う方々には頭が上がらない。本作の時代は1950年代。もちろんネット環境はない。本屋などが文化の発信地。それがあると無いとでは、住民の文化度も大きく変化していただろう。

原作は英国ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルド原作。今回の上映により、原作本は売り切れている店舗もあるという。驚いたのが、本屋を作ることに権力を持って潰す人がいたということ。当時のイギリスの持つ、独特な街並み。港町ということもあり、人もなんだかあったかい印象をもつ。一方で貴族的、高圧的な考え。笑顔ですり寄って、どす黒いことを言ってくるアレだ。パーティでのフローレンスとガマート夫人のやり取りは特に印象深い。笑顔で対峙しながら、互いの想いを伝える。一方的な力関係があるにも関わらず、一歩も引かないフローレンスに強い人間を見た。そして映像は正直で、残酷な時もある。立ち行かなくなり、本屋で突っ伏すフローレンス。温かみのある陽射しと町を冒頭に見ながら、その暖かさが人の気分を落としてくる。その明暗をしっかり、そしてハッキリと見せる監督は映像に正直だなと思った。一方で細部にかけて本の紙紐や本棚、そして本のチョイスも本好きにはたまらない。私的にはフローレンスの衣装が素敵で、少し殺風景な本屋に彼女がいるだけでパッと明るくなる印象を受けた。この映画、何回噛んでも味が出そうだ。

原作、役者、イギリスと本屋、すべてのパーツが「はまっている」本作。ぜひ多くの方にご覧いだだきたいです。
マイ・ブックショップ
(監督:イザベル・コイシェ/2017年/スペイン/112分/La libreria)

上映スケジュール
5/25(土)~5/31(金)12:20~
6/1(土)~6/7(金)14:20~
6/8(土)~6/14(金)16:10~