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元町映画館☆特集

どこまでも孤独、どこまでももろく、どこまでも強く『台北暮色』

求めていた景色がこの映画にあった

(c)3H Productions Ltd
(c)3H Productions Ltd
求めていた景色がこの映画にあった。
夕暮れに沈むビル群。空が薄いオレンジ色に染め上がる一方で高速道路を走る車のランプがバカみたいに眩しい。この空と地、自然光と人工の明かりが物語を対比させる。『台北暮色』台湾からまたとんでもない作品が生まれた。

こんなお話
台北で一人暮らす女性シュー。彼女の相方は2羽のインコ。ある日、インコが逃げ出した。その後、車で生活する中年男性、人と混じり合えない青年に遭遇する。
それぞれが孤独な悩みを抱えながら、解決することもなく時間だけが過ぎていく。
3人の視点と台湾の景色。バラバラのように思えたそれぞれの気持ちが露わになる。

まずはじめに3人の人生が交わる作品ではない。でもこれだけ違和感なく2時間を苦もなく観れるのは台湾という国があるからだ。監督を務めたのは女性監督、ホアン・シー。
巨匠ホウ・シャオシェン監督の現場に携わるなど経験は折り紙付き。そして本作が長編初というから驚きだ。

この映画、しかし何も起こらない。ドラマチックなシーンは特にない。でもそれがすごい。
それを可能にする3人の演技と監督の演出。監督は演技指導などなく、その環境に馴染ませることを大切にしたそうだ。でも観ているこちらはニヤけてしまう。なぜか。それは映画/映像の中に徹底的に台湾の空気を落とし込んでいる風に思えたからだ。ビルや下町、車や電車、インコにコンビニ。日本でも見かけるものばかりでも、台湾映画の中に出てくるそれらは違う。それぞれが出演者。混ざり合いながら、主張している。

何もないけど好きになるには理由がある。それは監督が台湾の街を好きさが伝わってくるからだ。特に中盤からラストにかけて、シューと中年男性が全力で走り抜けるところ。カメラは後ろから、そして前方に切り替わる。二人と街の関係を邪魔することなく、走る理由を考えさせることなく脳を癒してくれる。作中の印象的なセリフ「近づきすぎると衝突する」これがこの映画のすべてだと思う。何でも詳細に描けば良いものじゃない。

すべてに答えを出す必要はない。
それを_本作、台湾と言う国が教えてくれた気がする。
台北暮色
(監督:ホアン・シー/2017年/台湾/107分/強尼・凱克 Missing Johnny)

上映スケジュール
5/11(土)~5/17(金)17:40~
※13日間限定上映