元町映画館☆特集
職人か芸術家か 『世界で一番ゴッホを描いた男』公開
知らなかった、ゴッホの複製画を描き続けた男が中国にいたことを、複製画を描くことで生計を立てる人がいることも。
知らなかった、ゴッホの複製画を描き続けた男が中国にいたことを、複製画を描くことで生計を立てる人がいることも。
本作はこんなお話。
深圳市大芬(ダーフェン)、中国にある世界最大の「油画村」として知られ、最近は観光地化している街から始まる。そこには1万人の画工が生活し、複製画制作を通して生計を立てている。そこで暮らす男性にフォーカスを当てて、彼の制作工程、そして夢である本物のゴッホの絵に会うためのオランダへの道中に同行した貴重なドキュメンタリーだ。
主人公のチャオ・シャオヨンは20年間、ゴッホの複製画を描き続けている。その村で名前を知らない人はいない。独学で学んだ彼の絵は本物のソレと見間違えるような品質の高さで、海外からの注文も多い。生活はすべて工房の中。家族も一緒に絵を描き続けている。
そんな生活が続いた彼はふと本物のゴッホの絵を見たいという夢を持つ。最初は反対していた家族も彼の熱意に負けて許可を出す。そしてオランダのアムステルダムに到着した彼は自分の描いた絵がお土産屋で売られている事実を知る、そして本物のゴッホを目の前にした彼は思い知らされる…「全然自分の作品と違う、こんなにも遠いのか…」と。
複製画の技術にも驚かされる本作。だが特に注目してもらいたいのはシャオヨンの感情の動きだ。田舎出から出てきた彼にとって絵描きは生活の一部であり、ゴッホを描くことで自分を確立していた。そんな彼が初めて外に飛び出し、違う角度から自分の人生を見つめる。大切なことを教えてくれたのは誰でもなくゴッホの絵。誰よりも人間らしく、20年間かけて積み上げてきた自分の人生を否定も肯定もせず、前向きに選択した彼の決断を心から応援したい。
世界で一番ゴッホを描いた男(監督：ユイ・ハイボー、キキ・ティンチー・ユイ/2016年/オランダ・中国合作/84分/中國梵高 China's Van Goghs)
上映スケジュール2/2(土)～2/8(金)
14:20～
2/9(土)～2/15(金)
12:40～
