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元町映画館☆特集

牯嶺街少年殺人事件

伝説の傑作が25年ぶりに蘇る

台湾の名匠エドワード・ヤン監督の作品『牯嶺街少年殺人事件』がついに劇場公開される。
なぜ、伝説と言われているのか。映画史上に残る傑作と言われながら初上映以来25年間DVD化されず、観る機会がほとんどなかったから。なぜDVD化されなかったかは様々な事情があるそう。そこを勘ぐる前にきになる作品の内容とは。

まず驚くべきは本作の上映時間は3時間56分。この時間に追われている世の中で4時間の作品に挑戦する猛者がいるのか。そう、最初は私もそう思っていました。でもいるのです。この4時間を苦とも感じない人が。公式サイトを見るとこんな文章が「この人生には全てがある。人生の一日を費やすに値する3時間56分だ」(ニューヨーク・タイムズ)。そう全てが詰まっているとも言っても過言ではないくらい映像から逃げてはいけないものが本作に詰まっている。

ざっくりとしたあらすじ
1960年代初頭の台北。夜間学校に通うシャオスーは不良グループに属するワンマオとつるんでいた。シャオスーはシャオミンという少女に恋をしていた。しかし彼女は不良グループのボス、ハニーの女だった。一方、1940年代後半に中国から台湾に移った外省人とその子どもたちは中国に戻ることもできず、閉塞感の中で生きていた。
海外文学を好む彼ら。自分たちの手で未来を変えられる、この世界を照らすことをできると信じた彼らの運命とは…。

映画ってなんでこんなすごいことできるんやろうかと思わされた。正直、4時間もあると聞いた時、「長っ。映画2本分やん」て考えてしまった。どんな人が劇場で見に来るんやろうかという期待と不安が半分ずつ。でも前売券は飛ぶように売れる。しかもみんな妙にワクワクした表情で買って帰る。
それが本作への期待値の表れなのか。主要な人物はほぼほぼ未成年。演技経験のない人も多く出演していたらしい。でもなんだろう映画の中で彼らを見ていると沸々と心が煮えてくる。懐かしさや嬉しさとか言った感情じゃない。今まで抱えたことのない気持ちだ。どこで見つけてきたんやというくらい透明感のある少女シャオミン。彼女に翻弄されるというか人生を狂わせられる一方で、自分の人生に希望を見出す少年たち。そんな自由さを制限することも禁止することもしない、完璧に考えられたカメラワークには驚いた。

この映画のすごいところはそんな青春の恋心を描くだけでなく、60年代の台湾のいびつな社会構造を少年たちの家族からも描いた点だろう。光あれば影があるとはよく言ったもので明るい話題があれば暗い話題、世間で公表されなかった出来事が多々あったんだろうと想像させる。歴史に疎い私などでも想像力を働かせる楽しみを教えてくれる。

「自分たちの手で未来は変えられる」。この言葉がすごい好きだ。ベタな言葉だけど好きだ。いつまでも忘れちゃいけない言葉な気がする。少なくとも映画の中で少年たちは現実に立ち向かっていた。

この映画を見て何も思わない人間はいないのではないか。いろんな人が書いておりますが、本作を今観れること、様々なことを吸収したい若い世代はぜひ見てもらいたい。今までかぶっていた殻を思いっきり叩き割るような映画体験を味わうでしょう。


『牯嶺街少年殺人事件』

上映期間
4/22(土)~5/19(金)
※一律 ¥2200
レディースデーやシニア料金など割引一切使用不可。